水晶のスパイラル


「ミネラルショー」というものに初めて行って来た。平たく言うと鉱物市である。
東京でも毎年「東京ミネラルショー」なるものが開かれていて、公式サイトを見ると、「国内外から360店舗が出店する鉱物・化石・隕石・宝石の“日本最大級の大展示即売会”」とある。
私が行ったのは30店舗ほどのとても小さなローカルなもので、「自分で掘って来ました」的なおっさんから、鉱物を使った作品を売るアーティストまでいろいろ。


昔から鉱物は好きだった。図鑑なんぞを眺めるとその美しさにわくわくするし、海や川で拾ったものや、山へ旅行に行ってお土産に買ったものが家にいくつかある。基本、洗練された宝石よりももっと石ころっぽい方が好みなんである。しかし、今回そんなところまでのこのこ出かけたのには目的がある。水晶である。クリスタロスである。剛である。
もちろん事の発端は例の「クリスタルMix」の話。聴いていてムラムラと興味が湧いたので軽い気持ちでいろいろ調べてみたら、けっこうな沼にハマってしまったので、息抜きに実物を見物に行って来たと。


大体、水晶についてじっくり調べたことなどなかったから、もう基礎部分でいろいろと驚くことがあった。「水晶は日本の国石」とか「ダイヤモンドと並んで4月の誕生石」だなんて知ってました?ちょっと奥さん。


最近剛さんが名乗る「クリスタロス」というのは、古代ギリシャ語で「澄きとおった氷」(古代人は水晶を氷の化石だと思っていた)のこと。古代エジプトでは「太陽光の結晶」「光の石」と呼ばれていたり、古代中国では「水の精」が宿る石と信じられていたり(ゆえに”水精”とも書く)、古代から世界中でその美しく澄んだ石は人に愛され珍重されてきたようだ。


日本でも、藤原宮跡で当時地鎮のために使われたとみられる水晶が出土したり、古代から「土地を清め、厄を祓う力を持つ」と信じられた水晶を磐座にしたり、水晶をご神体とする神社もあった。
実はあの天河神社もそのひとつ。
主祭神は市杵島姫命だが、それとは別にいくつかの磐座が存在するようなのだ。ひとつは本殿の下に。ひとつは神社の奥宮がある「弥山(みさん)」。ここは、役行者が天河弁財天をお祀りしたところで、山そのものがご神体とされる。そして、禊殿の背後にある高倉山もまたそれ自体がご神体なのだが、この山は古来から「水晶でできている」と言われているのだ。


調べ始めてすぐ分かったのは、天川村というところは昔から水晶を初めとする鉱物の有名な産地だということだった。水晶谷という地名もあり、鉱物マニアの方のブログなど見ると必ず天川の名前が出てくる。


先日「TU」のジャケット写真を見て、同じ白い衣装でも「縁を結いて」の白装束から随分遠くへ来たもんだと思った。が、こうして見ると、天河神社で剛さんの上にあの曲が降りて来たところから発進したSHAMANIPPONプロジェクトが、今水晶に繋がったことが、とても自然に思えてくる。


同じ年の「十人十色 水声〜suisei」のLIVEをふと思い出した。リリースされたばかりの「Nijiの詩」の、あのMVの東北の海を思わせる青いライトが印象的で、剛さんはまるで水底で音楽を奏でているようだった。そのLIVEの最中、いろんな言葉がスクリーンに映し出された。
「僕らは水の惑星に生まれた」
「僕たちは水なのだから、大きなNijiをかけられるんだよ」
「心を澄ませて水声をききなさい」


この惑星の澄んだ水と大地に育まれ、何億年もの時を内包する水晶と今こんな風に出会い、彼の音楽がまたひとつ豊かになってゆく。そう言えば、水晶というのは結晶構造が全てスパイラルを描いているそうだ。
「戻ることが未来」
それは決して同じ場所に戻ることではなく、ゆるやかに上昇するスパイラルを描くことなのだ。


                     ◇◇◇◇◇


<余談> 2004年に、地球上でブラジルにしかないと言われていた「レインボー・ガーネット」が天川村で見つかり、鉱物クラスタの間で大騒ぎになったことがあるらしい。これも是非ググって画像を見ていただきたいのだが、それはそれは美しい石で、知ったらきっと剛さんも欲しがるのじゃないかしら。当然日本中の鉱物マニアが天川村に群がったので、自然保護の意味もあって、以降採掘は禁止になってしまったそうだ。