「新堂本兄弟」 アッコ×真治×剛 「古い日記」


「待ってましたっ!」
大向こうから声がかかりそうな、今夜のゲストは和田アキ子+武田真治という師弟(?)コンビ。
先月のMusic Fairで、堂本剛×武田真治×押尾コータローという最高にかっこいい「古い日記」が観られて大満足していたら、なんと「新堂本兄弟」にその本家本元のアッコさん出演のニュース。この日を心待ちにしていた。


この曲がリリースされた1974年は、かぐや姫「赤ちょうちん」、グレープ「精霊流し」といったフォークや、西城秀樹「薔薇の鎖」、郷ひろみ「よろしく哀愁」、フィンガー5「学園天国」などのアイドル歌謡が全盛、まだまだ演歌も強いところに、井上陽水やユーミンなどニューミュージック勢が台頭してきたという、日本歌謡界がかなりバラエティーに富んでいた頃。
そんな中でも「古い日記」は、「自分の思い入れが強いと言うより、リスペクトしてくれる人が多い」と彼女自身が言うように、ソウルフルな彼女の歌声とともに聴く者に強いインパクトを与え続けてきた、まさに昭和の名曲。


そしてアッコさんと言えば、豪放磊落かつ人情家な日本芸能界の「大姐御」。今回も皆ビビリ倒していたし。ま、あれは「お約束」だけど、あのストレートに何でもう言うキャラは、実はビビリなんだけどヒール役をあえて引き受ける、彼女のサービス精神の旺盛さから来ている気もする。
今夜は、その「怖可愛い」(?)人柄を伝えるエピソードを後輩のタレントたちが面白おかしく紹介、爆笑に次ぐ爆笑でスタジオが沸いている中、なんか目が笑ってない人が約一名。剛さんてば、余程緊張していたのか、よく観察してみると爆笑してはいるものの、心ここにあらずといった面持ちで時々目が泳いだりしている。
「ベストヒットたかみー」が始まって、「こう見えても緊張してる」というアッコさんに、「僕の方が緊張してますから」と、同じことを何度も言ったり、明らかな挙動不審っぷり。


でも、一旦音楽が始まりアッコさんの陽気なオーラが爆発したら、剛さんの緊張もイッキに解けた。Music Fairの時の張り詰めた雰囲気はなく、声もよく出ていて、サビのファルセットのきれいだったこと!隣で口ずさみながら、歌う剛さんをずっと笑顔で見つめているアッコさん。彼女のテンションが上がるごとに、最初の緊張がウソのように皆が笑顔になっていくのを見ていると、周りの空気を瞬時に変え引っ張っていく、そのパワーこそが、彼女の周りに人が集まる理由なんだろうと思った。


もしかするとこの「古い日記」は番組史上最大級の楽しいセッションだったのではなかろうか。真治くんのサックスもコーイチくんのギターも、それはそれはかっこよかった。最後の届かなかったハイタッチとともに、この名演は長く語り継がれることでありましょう。(ゴータさんのドラムと土屋さんのギターが恋しかったなんて、そんなゼイタク申しませんとも)


そのアッコさんが、この曲をカバーした剛さんに、「自分の歌をこういう風に継承してくれるのは嬉しい」と言ったのを聞いて、いつだったか、いとうせいこう氏が言ってた言葉を思い出した。
『古典芸能とは「カバー」のこと。カバーしながら、たまに出る名作を伝えていくこと。長い視点で作品を待ちながら、時代の才能がそれを演じるのを愛でること』
どんな芸能も、その時代時代の才能ある演者によって、次世代へと受け継がれ、人に愛されていく。


剛さんは「カバ」で、その「時代の才能」の仕事を見事に成し遂げたのだと思う。そんな思いを強くした、実にソウルフルな昨夜の「古い日記」でありました。
まだ披露されていない拓郎さんの「人生を語らず」も、いつかどこかで聴かせてほしいな。