Fashion&MusicBook 奈良観光特別大使吠える


昨夜は、大学のゼミで『奈良市に於ける観光活性化策』に関する研究をしているファンの方が、「剛さんの意見聞かせてください」ということで、「奈良観光特別大使」が語りました。


< 前からずっと言ってることだけど、モノゴトを改善するにはお金が要る。人が来なくてはいけない。残念ながら奈良の人が就職で京都や大阪へ流れて、ホテルも食も育ちにくい。でも、堂本剛が奈良でLIVEをすれば人が来る、奈良が潤う事が立証されたのだから、イベントをいっぱいやるべき。ただ、奈良は懐は深いけど、「最終的なことには踏み込ませへんで」というメンタル的な敷居が高いところがある。


例えば、平城宮跡とかお寺さんとか、いろんな宗派があって難しいとは思うけど、奈良の世界遺産でアートしたりLIVEしたりすれば、美しいから人もメディアもバンバン来るし、外国人もいっぱい来る。京都や東京でやるより奈良でやった方がなんかカッコいい?みたいなかんじで。フランスやヨーロッパの古い教会ででやるような、あそこでやると面白いかもとか、音楽に合うとか、ファッションに合うかも、とか。
特に奈良はファッションに使えると思う。平城宮跡でファッションショーとか、パリ人呼んでやったらいいのに、って思う。パリコレやめて奈良コレすればいい。


ヨーロッパ人来るとなると食も大事。「店ないやん」って言われちゃいけないから本気でやる。でもヨーロッパ人に合わせてヨーロッパの料理を作るのじゃなくて、「私は日本人です」「奈良人です」というところを料理に出す、サービスに出す、音楽に出す、っていう風にしていくと外国人は喜ぶと思う。「ニッポン、いいなあ」「特にこの奈良っていうとこ、ホンマにいいなあ」「また来たいわ」ってなる >


今は世界中どこの町でもどうやって観光客を呼ぶか、というのに躍起になっている。特にヨーロッパでは、ここ10年くらいでアジア(特に韓国、中国)、東欧諸国、ロシアからの観光客が激増していて、有名な観光都市は常時イモ洗い状態。その恩恵を得ようと、観光局は様々な集客イベントを企画し、「映画祭」だの「ビール祭り」だの、年中なにかしらイベントをやっている。
その中でも最近特に目立つのは、剛さんも言うようにアートイベントや夏の音楽フェス。面白い企画、出演者であれば人はどこからでもやって来る。


ただ、有名観光地の物価の高さや混みようにうんざりした旅慣れた人たちは、次第に「周辺」へ逃げ始めている。日本からの東欧や中欧、ヨーロッパの田舎へのツアーなどが増えているのもそれだろう。奈良もそんな美しい「周辺」のひとつだと思う。
リニア新幹線が通るとか通らないとか、京都となにやら闘いがあったりしたらしいけれど、勝手なことを言わせていただけば、奈良には新幹線など通さずずっと「片田舎」であってほしい。緑の山懐にそっと包まれる、私たちの国の始まった美しい場所へは、都会からことことと普通列車に揺られ、ゆるゆるとタイムスリップして行く。そういう時間を愉しむところから始まる旅もまた粋じゃないだろうか。


年末年始に里帰りした際、ツレアイと奈良を旅行した。彼は京都・大阪は何度か訪ねたことがあったものの、奈良はお初。2泊3日のうちに東大寺、春日大社、興福寺など市内観光、そして大神神社へ。その中で彼が一番感動的だったと言ったのは、大神神社だった。
小雨の中、三輪山の頂上まで歩いた。その霧に包まれたご神体のミステリアスなこと。下山して飲む狭井神社のご神水のやわらかさ。お守りをいくつかとご朱印をいただいた頃には雨も上がって、薄いオレンジに染まった空に鳥がしきりに鳴く。「寒いね」と言いながら「森正」さんの暖簾をくぐると、目の前に囲炉裏のような場がしつらえてあり、他に誰もいなかったので火のすぐ脇の席に座り、くべた木のぱちぱちという音を聞きながら温かいそうめんをいただく。「奈良、いいとこだね」「うん」
太古の自然への畏れから生まれた私たち日本人の信仰のありようは、ヨーロピアンの彼にも同じ「安らぎ」を与えてくれたようだった。考えたら、キリスト教が伝来する前のヨーロッパにも自然信仰があり、泉や樹齢を重ねた古木には精霊が宿るとされていたのだっけ。きっと人は誰も自然の中に置かれた時に、その気配を思い出すことができるのだ。


質より安さで勝負のファストフード、ファストファッションが蔓延した、そのリバウンドとして今どの分野でもデザインの重要性が語られるようになってきた。ストレスフルな世の中だからこそ、美しいものを目にすること感じることのリラクゼーションが求められる。美を極める仏像や建築物、そして悠久を感じさせる自然。奈良がもうすでに持っている美しさをどう守りながらアピールしていくか・・・。
ヨーロッパ各地では自治体がアーティストと組んで町興しをすることも多い。インフラの充実に血道をあげるより、これからはその土地ならではの魅力をどう演出、PRしていくかの「ソフト」の部分が問われるのだと思う。


せっかくやる気満々の観光特別大使をお持ちの奈良。もっと活用してさしあげてはいかがだろうか。(笑)