MUSIC FAIR 「いま あなたと 生きてる」


「孤独をテーマにしたんです。誰もが孤独を持っていると思うんで、その中にある輝きっていうものをもっと信じていいんだよ、ていうことを歌にしま した」。


MUSIC FAIRで披露した曲は、「いま あなたと 生きてる」。
白いスーツ、今夜は少しピンクがかったクリスタルをマイクに添え、歌いながら時折、身体の奥のほうから何かを絞り出すように身を折る。
なんだかすごい貫禄だなあ(体格のことではありません、ごほごほ)。どんな曲でもワンフレーズで、もう彼のつくり出した世界にすっぽりと呑み込まれてしまう。


アルバムを何度も何度も聞いているうちに、この「いま あなたと 生きてる」と、「恋にも愛にも染まるような赤」には、どこか「街」と「溺愛ロジック」に呼応しているところがあるような気がしてきた。もちろん、彼はそんなことを考えてこの2曲を選んだわけではないだろうが、あの頃の孤独と、現在の孤独が深いところで共鳴しているのを感じる。
周りが皆敵に見えた頃と比べたら、気の置けない仲間たちに囲まれた現在の状況は天と地ほども違う。だが、その孤独から逃れる旅の途中で彼が得たものは、「求めず、与える」という、もうひとつの孤独だった。


熱く睦み合う男女を描いたところで、彼の世界には孤独の匂いがする。どんなに今が楽しくても、いつか全ては消え去ってしまう。「溺愛ロジック」の心臓を突くような痛みはもうないけれど、「それでもひとは皆ひとりなんだよ」と、現実を見据える彼の後ろにふわりと寂しげな笑顔が透けて見える。


それでも、信頼できる仲間を得、最近の剛さんはとても楽しそうだ、大きな口を開けて笑い転げてる姿を観ると、随分変わったなあと思う。「自分を辞めないで変わる」、これが孤独とうまく共存する術を少しずつ学んできた結果なんだろう。この「いま あなたと 生きてる」が、あの頃の強がっていた彼自身に、「孤独はあなたの敵ではないよ」と語りかけているようで、心をぎゅっと掴まれる。


クリスタルには圧力を加えると電気を発生させ、電気を通すと振動する性質があるそうな。なんだかそのまま剛さんのことのようだと思った。
この「いま あなたと 生きてる」には、今もプレッシャーの中で「僕を生きる」剛さんの、強いヴァイブレーションを感じた。