「TU」〜あるがままの永久へ〜


「TU」の宇宙に放り出されたまま、未だクリスタロス星雲の中を漂っております。


いやもう面白いのひとこと。「黒いものなら何でもアリ」的なバラエティーに富んだ構成。ファンクはもちろん、ソウル、モータウン、AOR、R&B、etc...SWING-Oさん、十川さん、そして今回参加された佐々木潤さんの三人三様のグルーヴ、一層深みを増したサウンド(+クリスタル効果?)、変幻自在の言葉遊びに万華鏡のようにくるくるとニュアンスを変える剛さんのヴォーカル。それらの生み出す色彩の豊かさといったら、一見とりとめがないようにも感じられるほどに自由奔放。サウンドを楽しむもよし、リズムに身を委ねるもよし、言葉の世界に遊ぶもよしという贅沢三昧。


剛さんの詩は、まるでシュールレアリストの散文詩のようだ。彼の言葉で言えば「鮮明で繊細な曖昧」。ぽいっと投げ出された言葉の絵具を使って、好きなように描いてごらん、と言われているような、聴くひとりひとりが想像し、答えを出すことを求められる。「YES・NO」のない世界。正解などもちろん、ない。


そこに新たな地平を拓く佐々木さんとのコラボも面白かった。剛さん曰く、「佐々木さんのアレンジがエロかったから、詩が自然とエロくなった」。歌詞カード読まずに聴いて本気で驚愕した『天命さん』(このファルセットのなんという神々しさ!)、そこここに暗喩を散りばめた『Funky舌鼓』、直球で音と戯れる『人類の此処』。どれも佐々木さんによるメロウなアレンジが、ますます洗練された剛さんの掛詞や押韻遊びに、上質でサブリミナルなエロティシズムを演出している。
この二人の邂逅がもたらした「FUNKY説法官能小説」=剛さんの煩悩の解放(?)は、元々FUNKという音楽から漂う粘っこいエロ波動と目合(まぐわ)い、shamanipponというくにに新たな生命力を吹き込んだように思う。


その他にも、『EENEN』の諦念を超えたところにあるポジティヴな開き直りの心地よさ、過去現在未来全部さらって「あるがままの永久」へ疾走する『恋にも愛にも染まるような赤』の、ひとつまた何かを脱ぎ捨てたのであろう剛さんの全てを呑み込むブラックホールのような引力も、これまでとは違った魅力だろう。彼は言う、「愛でも恋でもかまわない」「生きたいだけ生こう」「無で愛し合おう」。
これが、某誌のインタヴューで、スティーヴさんが言っていた「(彼が)その両手にいっぱい抱えていたものが、時と共に削ぎ落とされ、何かが明確に見えてきた」ということなのか。彼が自分自身を縛っていた観念から解き放たれた、その悦びがこのアルバムから迸り出る。
『Heart Disc』が、その悦びのひとつの究極の表現だろう。
向かおうとする未来が、いま彼の目の前にクリアに像を結んでいる。



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私が最初に聴いたのは「ふつうよし」なのだけど、3種類あるパターンを試してみると、曲並びでアルバムの印象が随分変わって面白い。楽しみなのは9月2日に発売になるLP!その音質ももちろん、予約生産限定でチャートに関係ない分、細かいところに拘れそうだし、A面B面のあるレコード用の曲並びはきっと他と違うんじゃないかと期待している。ご予約まだな方は以下。


◇ れこーどうもとつよし ◇
CDアルバム「TU」からセレクトした8曲(予定)を収録する堂本剛初のアナログレコード!!!
  ¥3500 12インチアナログレコード1枚/2面4P歌詞封入
  ※完全予約生産限定 予約受付は2015年7月12日まで