「プラトニック」#6 早く楽になりたい 


毎回小さなどんでん返しが起きる。聖女のようにみえた5話の沙良が今回は悪魔のようでもある。残酷な少女から残酷な女へ。


沙良は突然沙莉に、青年と結婚したこと、そして彼が心臓のドナーであることを告げる。動揺する沙莉。
青年と交わした、「お互いの望んだことにNOと言わないゲーム」。青年は元カノと会うことを約束させられる。そこで知ったのは、彼女が彼の病気を噂で聞いて知っていたという事実。美しい思い出は幻想だった。彼女にとって自分はその程度のものだった。女性の心理を知り尽くす沙良は、その結末をわかっていて青年を彼女の元へ行かせたのだ。


嫉妬もあったろう。「母親」という檻から自由になれたことで、初めて味わう嫉妬という感情にわくわくしていたのかもしれない。恋をして、娘の気持ちも考えずに、まるで友達に話すように残酷な真実を話し、青年の心に棲む元カノを追い出すことにも成功する。


このドラマを観ているとつい沙良の心理分析をしてしまう。どうにも同情できないし、つかみどころがないのだ。やっと青年と出会えても、長いことひとりぽっちの世界で生きてきた彼女の心は、また「二人の世界」という小さな檻に入ってしまうだけで、青年の気持ちを気遣うより、自分の世界の完成をまず優先してしまう。彼女の青年に向ける夢見るような微笑みですら、その瞳はどこか虚ろに見える。彼女にとって檻は心地の良い現実逃避の場所なのだ。


例えば、青年が元カノが会っている間、沙良はお寺で何気なく沙莉の回復を祈ってしまい、愕然とする。沙莉と青年の関係、両方を手にすることはできない、皮肉な現実。
しかし、ここでも彼女は、めまいがするほど現実の恐ろしさに打ちのめされたすぐ後に、彼女の仕掛けた残酷なゲームに傷つき戻ってきた青年に満足そうな微笑みを向ける。


青年はそんな沙良に、佐伯に言われたことを試してみる。「世界に二人きりなんて思える二人は心中も厭わない。どちらかが首を絞めても、すぐに相手が後を追って来てくれると思うから、苦しまないし、ましてや怖がったりしない。ただ、微笑むだけだ。やってみろよ!」。こんな風に自分を苦しめる沙良は一体自分を本当に愛しているのだろうか。不安に駆られた青年はその首に手をかける。沙良は抵抗もせず、ただ微笑む。


なんだか女の恐ろしさばかりが描かれた中、いつもながら心洗われるような青年と沙莉のシーン。何もかも知ってしまった沙莉の沙良や青年を気遣う優しさ。
実はこの二人の出逢いが「運命」だったのではないだろうか。沙良よりも青年を理解し、大きな愛情で包めるのは沙莉のほうで、本当の意味で青年の孤独を埋められるのも沙莉なのではないかと思う。この二人のやりとりを観ていると、沙良と青年の関係が単なる鏡合わせの自己愛のように思えて来る。


そして何と言っても大事件は、青年の腫瘍が奇跡的に小さくなり、回復の可能性が出てきたこと。青年は目的を失い、「二人の世界」が崩れてゆく。
と、益々とっ散らかっているのに、ドラマは余すところ7話と8話の2回のみ。終わるのは淋しいけど、ああ、早く楽になりたい。