ココロ見<ふるさと>後編


後編の今日は、前編からの続きの仏師・吉水快聞さんと、プラントハンター・西畠清順さん。


奈良で実家のお寺を継いだ僧侶でもある吉水さんと、クライアントからの注文を受けた植物を求めて世界を駆け回るプラントハンター・西畠さん。
外見も仕事も極端に違うように見えるこのお二人、共通項は「外に出てみて”ふるさと”を発見した」というところ。


吉水さんは、東京の美術大学で「奈良出身」というだけで羨ましがられた。美術を志す人たちに奈良はお宝の山。授業では自分の身近にあったものが出てくる。そこで初めて気づいたふるさとの良さ、奈良で生まれ育つということの意味。
「いろんなことをわからずにやって、搾り出したものは、奈良に生まれ育ったから出せたもの。何かアウトプットしようとすると奈良が出てくる。ふるさととは、自分の全てを成すもの」


兵庫に生まれ育ち、家業の植物生産卸業を継ぐ西畠さんは、21歳まで植物には興味が全くなかったが、ある時ボルネオ島で世界最大の食虫植物を見た途端、雷に打たれたようになり、植物の面白さに目覚める。
「世界の各地で珍しい植物を見つけ、その成長を見ていると、その土地の人たちにはその植物がふるさとなんだと思う。植物の数だけふるさとがある。
世界中のいろんなところへ行けば行くほど、日本の空気の匂いや四季がある日本がふるさとだと思う。日本の植物に魅力を感じる。一番好きなのは桜」
「地元にいると気がつかない。若いときは外に憧れるけど、ふるさとは一周まわって帰ってくるところ」


そして剛さんが言う。
「どこで仕事をしてもふるさとで形成された”自分”が反映して仕事や仲間や家族につながっていく。ふるさとって大事な場所だと、改めて東京が気づかせてくれたことに感謝したい」
自分の見たもの、感じたこと、すべての経験が「自分」という「ふるさと」を形づくっていくんじゃないだろうか、という含みを持たせて、「ココロ見」は次のテーマ「自分」へと続く。


この「ココロ見」という番組、大人だけで観てはもったいない。遅い時間帯の放送ながら、その内容は中学生や高校生のこれから「自分の仕事」を考えていく世代の子供たちにも是非観て欲しいものだ。
いろんなところで見聞きすると、「仕事というのはすべて生活のためで、苦しく辛いだけのもの」と思っている子が多い。親が望むから、失業の危険が少ないから、お給料がいいから、かっこいいから、やりたいことが特にないからとりあえず・・・その仕事の選択に「好きだから」が聞こえてこない。そんなことを言うと「甘い」と叱る大人もいる。でもそれはそんなに大それたことじゃない。何かを売る仕事なら、自分の好きなものを売ればいい。好きなものを人に薦めて喜んでもらうことが自分にとっても喜びになる。


「好き」だから力が湧き、創意工夫をし、やりがいが生まれ、その結果が自分も周りも幸せにする、ということが昨今あまりに無視されている気がする。例えば、今不況と言われる音楽業界。果たして今のレコード会社の社員に「音楽が好きで好きで、そうしても音楽に関わりたかった」という人がどれだけいるだろう。医師は?教員は?政治家は?本当にその仕事が好きで選んだ人たちだろうか。
バブル期、仕事が選び放題だった頃、全く興味のない業種であっても名前やステータス、給料で就職先を選ぶ学生が多かった。なんだか、その「好き」がないがしろにされ始めたその時期から、世の中がおかしくなっていった気がする。実際、その頃入社した人たちが世の中を動かす時代になり、愛の感じられない商品やシステムに囲まれたこの国の国民の幸福度はどんどん下がっている。


この番組のうたい文句は、「悩み多き現代人のために、堂本剛が各界一流の賢人と深く、時にユルく問答して、豊かに生きるヒントを聞く」。その「悩み」がどこから出(いず)るものか、ここに登場する人たちの笑顔や静かな瞳を見ていると、自ずと見えてくる気がする。


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吉水快聞さんHP http://www.kaimon.biz/
西畠清順さんブログ http://hanau.jp/
西畠さん@ほぼ日 http://www.1101.com/beginning/sora/2012-05-14.html
代々木VILLAGE by Kurkku ttp://www.yoyogi-village.jp/top/