遅すぎる「Gravity」DVD鑑賞記


片方が「オバケ」で、もう片方が「ヴァンパイア」かー。
と面白がって光一くんの「LOVE CRIES」のMVを観てからしばらくCD、DVD両方を何度となくリピってしまった。去年CD発売時に聴いて感想もこのブログに書いた。基本的な印象は今も変わっていないのだけど、自分がこんなにリピることになるとは正直この時は思っていなかった。
「Gravity」拝聴記:http://d.hatena.ne.jp/blancmange/20121024/1351073854


自分の目線をしばしニュートラルに切り替え、一歩「引き」で観る「Gravity」の世界は、観れば観るほど特殊な世界だなーと思う。「ジャニーズ」という特殊性だけでない。例えば、剛さんのつくる世界は完全にジャニーズの枠を出ているのに対し、光一くんはその内側に留まりつつ、その中でも外でも誰もやっていないことをやっている。
ジャニーズだからこそできる贅沢でもあるのかもしれない。完璧なステージを構築するための技術や叡智の粋を集めたステージングは、舞台演出や美術を志す人たちのテキストとして使われるようなものではないだろうか。


観に行った方から聞いて想像していた以上に美しいライティング。最新の技術やアイディアの粋を凝らしたものなんだろう、光と影のコントラストがタメイキが出るほどきれい。ホログラムやスクリーンを使ったマジックのような演出や、生き物のように形を変えるライトやレーザー。幾重にも重なる光と影の生み出す浮遊感、まるで別次元へ迷い込んだような錯覚、攫われる感満載。呆然と口が開く。


光一くんのDVDは本人が監修しているから、ジャニーズの映像なら多用されてしかるべきアップや寄りが少ない。そう聞いて笑ったのだけど、確かに少ない。ありがちな、寄りすぎてダンスが見えないじゃーん!な心配は一切ご無用。ダンスの見せ方ひとつにしても彼のこだわりがひしひしと伝わってくる。
誤解を恐れずあえて書くと、光一くんのダンスというのは端整ではあっても、実はソロダンサー向けのぐいぐいと前に出る突出したアイキャッチがあるわけではない。それは多分彼の性格から成るものだ。「みんなでステージをつくり上げていくその過程が好き」という彼は、プロデューサーとディレクター両方の視点を兼ね備えた群れをまとめる優秀なリーダーであり、エゴをそぎ落とした冷静な目で隅々まで計算され尽くしたこの「Gravity」という作品に、そのまま反映されている。彼の見て欲しいものは、キラキラの衣装を纏った彼自身ではなく、彼のつくった世界/ステージなのだ。


だが、このステージが単なる総合舞台芸術の教科書で終わってしまわないのもまた、堂本光一という人のステージ上での独特な存在感なのだ。彼のヴィジュアルはいわば2.5次元。完全に2次元なフィクションではないが、生々しい肉体を感じる3次元の存在でもない。どこか儚げに美しく本当に朝になったら消えてなくなりそう、もしかしたらホントにうんこしないのかも、いやいやいや・・的な、そこに在ることでステージ上の非日常な別世界に観客をするりと引きずり込めるのも、彼の天性のアイドル性というものなんだろう。


「LOVE CRIES」のPVでは、ヴァンパイアという設定にその2.5次元性がフルに生かされ、曲に深い物語性を与えている。光源氏を思い起こさせる狂おしい禁断の恋の歌が、彼が蒼い月明りの下に佇んだ途端、永遠の命を持った者の深い孤独の色を帯びる。「彼は何度こうしてひとりハレー彗星を見送ったことだろう」。「ポーの一族」世代はもう一瞬でタイムトラベル。遠い目をした乙女に戻ってしまう。


それにしてもこの「Gravity」では、彼の声がやけに耳に残った。ここ数年のハードな「Endless SHOCK」のスケジュールに耐えうる喉を作るためのボイストレーニングの成果と年齢から来る円熟味だろうか。深さや激しさを増したような気がするその声には、彼自身のつくった「LOVE CRIES」の旋律が、今現在の彼の魅力を一番伝えるものに思えた。実は新堂本兄弟でこの曲を歌った時、普段2.5次元な彼がやけにリアルな男に見えた。きっと「何か」を演じていない素の堂本光一として歌える曲なんだろう。
思ったことはただひとつ。今の二人の声でK albumの世界をもっと深く掘り下げて煮詰めた複雑な大人の愛の世界を歌ってくれたら、どんなにすばらしいだろう。


ああ、「shamanippon」「Gravity」と続けて観て、結局たどりつくのはそこという飢餓感MAXなこのかんじ。次は15コンDVDを観た後に同じようなうわごとを書きます。はい、どうもお疲れ様でした。