SONGS 「街」 僕らは歌う


カバ祭りのトリを飾ったとも言える、NHKの「SONGS」。今夜再放送があった。
実は前回の放送も観たのだけど、なんだか「うわああ」と口を開けてるうちに終わってしまった。感動というより、動揺。今夜はもうちょっと落ち着いて観られるかと思ったが、やはり同じだった。


構成がとてもよかった。彼の生い立ちから現在までの歴史を、奈良でのロケやVTRなどを使って丁寧に追っていく。彼自身のナレーションも交え、印象的なエピソードの横に、彼の人生の分岐点ともなった曲が添えられる。今夜初めて堂本剛という人を知った人にも、その為人をよくわかってもらえたのではないだろうか。サスガNHKさん、グッジョブ!


彼自身のコメントとともに紹介されたのは3曲。
「この曲を家族で行ったカラオケで歌ったのが、自分の歌を家族に歌を聴いてもらいたいと思った初めての瞬間。この曲と出会っていなければ詩も書いていなかったかもしれないし、音楽もやっていなかったかも」という、『はじまりはいつも雨』。


上京から2年後、彼は「金田一少年の事件簿」で一躍トップアイドルに。しかし、人気が高まるにつれ、周りの都合のいいように勝手につくり上げられていくイメージに本当の自分が追いつかなくなっていった。


「奈良に本当の自分を置いてきてしまった感じがすごくあった。奈良の残してきた本当の自分が、東京にやむを得ず出て行かなきゃいけない自分を見送っているようでもあり、東京の自分が奈良の自分に対して、奈良の自分が東京の自分に対して歌い合ってる、訴え合ってる、メッセージを交換し合っているイメージ」。
葛藤の中、本当の自分を言葉と音楽で表現したかったソロデビュー曲、『街』。


天河神社。8年前に初めて訪ねて以来その神秘的な魅力に惹かれ訪ねてきた。
「ここは原点。数字で言うとゼロ。リセットとか、何かが始まるところという感覚がある。ある時、参拝中に母が見せた涙に、この詩とメロディーが溢れ出してきた。親から子、孫へと受け継がれる命へ。太古から続く命の営みへ。そして、これまで会った全ての人へ感謝をこめた」、『縁を結いて』。


なんと言えばいいんだろう。しっくりくる賞賛の言葉が浮かばない、という動揺。
私は基本的に天邪鬼な人間なので、人を褒めるのが苦手だ。その素直じゃない人生を今後悔するほど、「すごい」「かっこいい」以外の「最上級」なボキャが欲しい。神様。


特に圧倒されたのは、「街」。この時の「街」は、いつになくエモーショナルと言っていいほど感情がむき出しになっていた。
Mステの「I LOVE YOU」の時もそうだったが、彼は「誰か」の想いに共鳴する。一体となるのではない。その強いシンパシーと共に寄り添い、一緒に歌う=「言挙げ」をするのだ。「愛してる」と歌い、ここでは「このカラダまだ行けるさ」と歌っては、あの頃の自分と共に空へ言の葉を放つ。


23歳の自分と34歳の自分のコラボ。「僕ら」は自分と、自分の分身。二人のユニゾンが時空の境目を溶かしていく。歌い終わった彼の目ににじむ涙。それを隠そうと唇をきっとむすぶ、それは確かにあのMVの中の傷だらけの彼、だった。


カバ祭りが終わるのは寂しいけど、ホッとしている自分もいる。カバーアルバムがこんなヘヴィーなことになってるとは夢にも思わず。高尾山かと思ったらエベレストだったかんじ(涙目)。
この「SONGS」はもう伝説の域です。疲れたので、今日は寝ます。
「縁を結いて」の底なしの深さはまた日を改めて。