きゃりーちゃんと「日本のかわいい」


『かわいい♡』。と言っても今日は剛っさんのことではありませんよ。きゃりーぱみゅぱみゅちゃんの出ている番組を観たのでした。


彼女は今まさにワールドツアー「100%KPP WORLD TOUR 2013」の欧州3ヶ所での公演が終わったばかり。残念ながらちと遠方で観には行けなかったけれど、彼女のライブはチャンスさえあれば一度観てみたい。
彼女のセンスの面白さは、スゥィートなところに、何か「異物」を放り込んでくるところ。今回のドキュメンタリーでも紹介されていた「鼻血」とか「タコ」とか、ステレオタイプな「かわいい」に、変なものやグロテスクなものを混ぜた独特なテイスト。その竹下通りでおもちゃ箱をひっくり返したような彼女のカオテッィクな「かわいい」をクリエイターたちがチームを組んで、ステージに具現化していく。


欧州におけるニッポンカルチャー、特にこの「日本のかわいい」というセンスの急激な浸透っぷりはすごい。ちなみに私は何の因果か、欧州でも特に「かわいい」不毛の地にずーっと暮らしている。ほんの10年ほど前を振り返っても、ここには「かわいい」どころか、「ファンシー」「キュート」「ラブリー」といったセンスは一切存在せず、デパートの文具コーナーはついこないだまで「サンリオ以前」の昭和の文房具屋だった。そして、いつしか街に中国経由で輸入された(パッチもんの)キティーちゃんグッズが出回り始めた時、この国の女子は初めて「日本のかわいい」というセンスを発見したのだ。


でも、彼女がライブをしたブリュッセル、パリ、ロンドンは都会だし、特にフランス文化圏は、ロリータやガーリーなものを偏愛する日本と似た「かわいい文化」だから、あのセンスも受け入れられやすかったのではないかな。昔から日本で「かわいい」の代表的なアイコンだったオードリー・ヘップバーンが、フランス人のデザイナー、ジバンシィに愛され続けたように、日本とフランスには何か共通のテイストがある。
最近、こちらの広告などでもヘップバーンのイメージを使った広告を目にする事が多くなったが、これは絶対、日本の「かわいい」が世界のスタンダードになったということだと私は密かに思っている。


日本では80年代90年代の「olive少女」たちが夢見たヘップバーンは、日本ではゆるぎない「かわいい」のアイコンだったけれど、当時欧州の女子には「誰それ?」的な扱いで、語学学校では先生たちが「何で日本人はそんなにヘップバーンが好きなんだ?」と首を傾げていたものだった。
その、日本人の「かわいい」テイストが、時を経てアングラサブカルetc.混血融合突然変異の紆余曲折の果て行き着いたところが「きゃりーぱみゅぱみゅ」。そのビジュアルは一見過激に見えても、私が20歳の頃にもあった「日本のかわいい」と同じルーツを持つものだから、抵抗など全くないどころか、つい「いいぞいいぞー♡」と応援したくなってしまう。


・・が、驚いたことに彼女曰く『私は新人類。誰にでも好かれようとは思わない。自分の「好き」を貫き通して、新しい「かわいい」をつくって行きたい』。
「新人類」って80年代の若者へ「理解を超えたもの」と言う意味で大人が与えた呼び名なんだけど(笑)。そうか、あの頃生まれた「新しい」はかれこれ30年経った今もまだスタンダードとは呼んでもらえていないのか。
でも、今は日本製のアニメやゲームで育ってきた人たちがフツーに世界に溢れているから、日本の保守的な大人が驚愕する速さで「日本のかわいい」は「世界のかわいい」になっていくと思う。


きゃりーちゃんのライブでも、フランスのヲタチックな男子やコスプレ女子の中に混じって、ごくフツーの子供たちが目を輝かせてステージを観ていたのがとても印象的だった。