「Gravity」拝聴記


ぞーんぞーんでんじゃーぞーん うぉなふぃるでんじゃーぞーん♪
というわけで、しばらくコーイチくんの「Gravity」を激しくリピっていました。
彼のアルバムをまるっと聴いたのは今回が初めて。KinKi Kidsのファンとしてはまっこと片手落ちなことながら、彼のソロワークに首を突っ込む「ご縁」を得ぬままここまで来てしまいますた。


正直、私のテイストとは違うのだけど、結論としてとっても楽しめた。
剛っさんの言葉はいつも何か薄皮に包まれているようで、1曲1曲そぅっと優しくそれをはがして匂いを嗅いだりひっくり返したり舌で転がしてみたり、その世界に入り込むまでのそのプロセスに愉しみがあるのに対し(わたしは何を言っとるんだ)、この「Gravity」は、シングル「Danger Zone」のPVそのまま、輪郭のクリアなイメージとキッチュな常套句の言葉攻めでグイグイその世界に引きずり込まれる感覚。まったくアプローチの違う表現方法ながら、どちらもリスナーをひととき異次元に誘い込む、その手腕は手練のプロのそれだ。


「Danger Zone」をこのアルバムのメインに持ってきたのは、彼の演出家的なセンスからだろう。この曲、最初に聴いたときはなんだか韓流ぽく感じたのだけど、よく聴くとそうではなくて、「エキゾチック」なのだ。アジアっぽいけど日本のものではない、その不思議な感触の理由は、調べたらすぐわかった。曲を作ったのがスウェーデンのスタッフだったのだ。それは「外から見たアジア」の音。その現実との「ズレ」が彼の構築する「Unknown World」へ観客をするりと呑み込む入口になっているのだ。


サウンド的には剛っさんの雑食性に対し、コーイチくんの作るサウンドにはアメリカンロックの影響が感じられる。主に70年代のメロディーラインの美しい古き良きアメリカンロック。以前、新堂本兄弟の中で「ウチのオフクロが聴いてたんです」と高見沢さんに語ったそのバンド名(失念!)は、ちょっと驚くほどマニアックで、お母様、かなり男っぽいシュミのロック少女ではなかったかと思われる。彼の作る輪郭のはっきりしたメロディーは、その影響なのかな?


私は彼の作る曲のポップさがとても好きだ。キャッチーな哀愁のこもったメロディー。今回はほとんどが提供曲な中、「LOVE CRIES」でその「こーちゃん節」が存分に聴ける。私はやっぱりこの曲が一番好きかな。特に新堂本兄弟で聴かせてくれた
「LOVE CRIES」は絶品だった。CDよりもざらざらとしたライブの耳障りが、この曲にとてもよく似合っていたし、ライティングや映像処理がほんとにグッジョブでいい演出だったと思う。


この曲の詞は彼の作品をよく手がける白井裕紀さんの作。ここでは主人公は光源氏なのね。そして朧月夜、夢浮橋、空蝉とくれば、これはもう「禁断の恋」。誰かのモノである女に恋焦がれ狂おしく月に吠える男。
「好きになればなるほど愛に痛む心に秘密を深く刻む」。稀代のプレイボーイの情熱的な言葉も、彼の声が乗ると随分ストイックな響きを帯びて、恋に悩んで今にも出家しそうなコーイチ版は、これまでどの俳優が演じた光源氏より心惹かれた。


「Gravity」のツアーでは、アンコールでこの曲が始まると、天井から花道が降りてきてまさに夢の浮橋だったと聞いた。観せ方を知ってるなあ。それは本当に観たかったかもー。今日は名古屋公演すね。あ、ういろう食べたいな。