Fashion&MusicBook 「きみがいま」


今夜のFashin&MusicBook、剛っさんやけに饒舌。なめらかに、かむこともなく、あー・うー・えーもほとんどなく、文字数にしたら普段の倍あったんじゃなかろうか。小喜利効果もあってしゃべくり絶好調なのかな。とてもいい話が聴けた。


15歳のファンの「今のうちにした方がいいことってありますか?」という質問に答えて、「今10代の人たちが呑み込まれているその空気感を意識して呑み込まれてほしい。客観的に自分の時代を眺められる力をつけてほしい」。
「そのために大人は、考える余地のある歌を作った方がいい。聴いた人が想像力を使う独創的なもの。音を楽しみ、音を楽しませる。心の知恵をつけさせるような商品を大人が出していくべき。心が育たないのは大人の仕業」。


今の音楽業界のあり方へのチクリとした皮肉。音楽をビジネスとしか考えていない人たちが作ったシステムが、今の退屈なミュージックシーンを作り、結果として自分たちの首を絞めるような業界全体の沈滞に繋がっている。耳障りがよく覚えやすくて誰にでも歌える反復の多いシンプルなメロディー。誰にでもわかる言葉を使った誰にでも共感できるラヴソング。そんなものが手を変え品を変え大量生産される。もはやCDが売れないのは不況やニーズの多様化だけではないだろう。


アーティストというのは、いつでも時代の一歩先を行く、新鮮で刺激的なメッセージを投げかけてくる人たちであったはず。なのに、「難解すぎる」「今の流行と違う」と自分たちの作りたいものを作らせてもらえない。
でも、それに耐えられずメジャーを離れて自らインディペンデントのレーベルを作り作品をリリースすることを選んだスガシカオさんのようなアーティストも出てきて、流れが少しずつ変りつつあるという声もある。作る人売る人買う人が皆それぞれに感性を磨いて共存する道を探す時期が来ているのかな、と思う。


そして、もうひとつ「剛くんは自分の未来をどう想い描いていますか?」という問いへの答えがとてもクリアで、感動的だった。
「僕がつくり出したいものは”灯り”のようなもの。暗闇の中にぽっと浮かぶ”灯火”
(ともしび)。僕の音楽を聴いていても、最後は自分の足で出かけて欲しい。そして人生で道に迷ったら僕という”家”に寄ってくれたらいい。そこで話をしたらヒントが得られるかもしれないし、焚き火にあたって温まったらまた元気が出る」
「前はファンの人にとって太陽や月のような明りになろうと思う気持ちが強かったけど、今はその人が選んでその”灯り”に入ってくるっていう関係性がいいと思う。僕はいつでもそこにいるから、皆さんがそこに入って来て、また出かけていく。そういう関係がいい」。


そして贈る曲は「きみがいま」。


私があのアルバムの中で一番好きな曲。
人はそれぞれの足でそれぞれの人生を歩いて行かなくてならないけれど、自信を失った時や傷ついた時、その腕の中でしばしの休息をとらせてくれる人が欲しい。そんな時、ただ一言「ぼく(私)はきみを信じてあげるよ」と言ってくれ、ひととき「灯火」の下で温め合える相手が一人でもいたら、その人生はそれほど悪いもんじゃないと、私は常々思うのだ。そして、私自身も誰かにとって、そういう存在であれたら嬉しいと思う。
「求めず、捧げる」、ということがこの曲では「信じる」という言葉で歌われている。


剛っさん、Shipで一体何を得たんだろう。大きな帆を張って大海原をゆく船が本当に見えるよう。いや、単に「ステキ」、ってことなんですけどね。はは。