SHAMANIPPONのプログレ


ニューアルバムにいろいろ想像をめぐらせているついでに、予習も兼ねて(笑)、持ってるだけのテクノ・エレクトロ系といわゆるプログレと呼ばれる分野のCD(さすがにアナログ盤は実家に置いてきたからナシ)を引っ張り出して聴いている。


私とてプログレは追体験。中学生になってキング・クリムゾンやらジェネシスやらピンク・フロイドやらの基本どころを聴いたけど、当時の中学生にプログレは「オヤジの聴くもん」的な敷居の高さがあり、実際同世代のプログレ愛好家は自分でも楽器やバンドをやってる、理屈っぽくてちょっと暗い目をしたマニアックな男子しかいなかった(田舎だったから余計)。かっこいい音だなーとは思っても、郷ひろみ好きがバレている手前、その輪に入れてもらうのは難しそうな空気があった。


そうこうしているうちに世はパンクの台頭で、プログレは益々前世紀の遺物的なモノになってしまった。私はと言えば、当時の典型的なミーハーサブカル少女として、テクノ、パンク、New Waveにドップリ。お気に入りのミュージシャンが影響を受けたと聞けば「周辺情報」もしくは「基礎知識の強化」としてまたプログレを聴いたりしたが、基本的に軽佻浮薄な80年代とプログレは相容れないものだったように思う。


英国モノの中ではキング・クリムゾンが一番好きだったけれど、ああいう叙情的な狂気を完璧なテクニックとアレンジでキメキメにキメた音楽があったからこそ、その後同じ英国にその閉塞的な空気や価値観を根底からブチ壊すようなパンクが生まれた。そして、その破壊された瓦礫の中から、シロウトが好きなピースを組み合わせ継ぎ接ぎし自分の好きな形に再構築したものがNew Waveだったと思う。そこからは折からのワールドミュージックブームと相まって、それまでになかった新しい音が沢山生まれた。パンク以降、シンセサイザーの普及も手伝って、音楽はプロのミュージシャンしか演奏し得ない何やらムズカシイものから、センスさえあれば誰にでも参加可能な身近なものになったのだ。


と、ここで剛っさんが以前好きだと言っていたドイツ系やフランス系のテクノや、プログレを必死に聴いたところで、また綺麗に裏切られるのはわかっているけど(笑)、あの頃にはなかったyoutubeなども駆使して、食わず嫌いだったバンドなど今聴いてみると異常に面白かったりする。


特にいいなーと思ったのが「新月」。1979年のデビュー、和製ジェネシスと呼ばれた、ライブパフォーマンスを重視し、珍しく歌詞に英語を全く使わなかったプログレバンド。繊細な叙情性が妙に懐かしく、和楽器を使っているわけではないのに(少なくとも私が聴いた限りでは)その音からは日本的な美意識が強く香る。しかし79年と言ったらもうパンクに破壊されてプログレはすっかり「廃墟」化していた頃。youtubeで検索するとPVとして作られたライブ映像があるけれど、それを見ると、彼らは廃墟からプログレという音楽スタイルを拾い、ナイーヴなフォークっぽい歌詞をつけ、当時始まりつつあった現代演劇(小劇場)のテイストをまぶしたような、プログレの極みのようでありながら、既にそこからまた進化した「ポストプログレ」的なものをつくりたかったようにも見える。それが何かこのバンドが持つ他と違う「新しさ」なのかもしれない。


きっと「shamanippon - ラチカノトヒ -」もそんな新しい表現、新しいテイストの21世紀の和風の薫るプログレやテクノになっているんだろうと思う。剛っさんの目に留まったキラキラした大好きなものの破片を全て拾い集めて彼だけの「オリジナル」をつくり上げた剛ワールド=SHAMANIPPON。その国のうたはきっと何にも似ていない、オリジナルな愛と祈りに満ちた幸せな音がするんだろう。