「変わったかたちの石」のある風景


KinKi Kidsの32枚目のシングル、「変わったかたちの石」が今日発売された。
秋元康作詞/マシコタツロウ作曲の、しっとりとしたバラード。地味ながら「珠玉の」という言葉の似合う、端正なイメージのある楽曲だ。


だが、いつもならプロモーションのためのTV出演が増えるこの発売前後はファンにとって彼らの姿を観られる「お祭り」のひとときが、今回は全く違った様相を呈している。従来のようなTVへの露出が全くないのだ。コーイチくんは博多での「SHOCK」公演の真っ最中。じゃあ剛っさんがひとりでバラエティー番組などのお座敷周りをするのかしらとも思ったが、結局それもナシ。恒例の原宿駅前の看板もナシ(渋谷駅前はアリ)。年末年始のKinKi コンでお披露目され、リリース直前に東京と大阪の映画館で「プレミアム上映会」と銘打たれた30分ほどのPV(メーキング含む)上映会があっただけ。


発売の発表があった時にも書いたが(左記の最新タイトルにある「新曲に思うこと」参照)、このあまりに普段と違う、地味すぎ〜るプロモに「なんで?」という疑問は誰もが持ったことだろう。どうしてこの時期なの?ギネス記録の更新はどうでもいいの?全く売る気がないようにしか見えない、JEの考えていることが全く読めない、とファンは気をもんだり首を傾げたりするばかり。
・・・と思っていたら、想像だにしていなかったことが起きた。発売日直前になって、この状況を黙って見てるわけにはいかないわ!JEがやらないのなら私たちがやる!とばかりに「図書委員」たちがジャンヌダルクのごとく立ち上がったのであーる。
その結果、Twitterは夥しい数の新曲の購買、TVやラジオ、有線へのリクエスト協力を求めるツィートで溢れた。ありとあらゆるリクエスト番組のURT、有線放送や各コンビニ店内放送へのリクエストの仕方を書いたものから、「変わったかたちの石」という曲名をひとりでも多くの人に目にしてもらうための<拡散希望>の宣伝ツィート。その中には韓国語や中国語、スペイン語のものまで混じっていた。
それはもう見たこともない、驚愕を超えて小気味のいい感動的な光景だった。


数字なんかはこうなるともうどうでもいいのだけど、一応オリコンを調べてみると、初日の売上げは約5.5万枚。前回の「Time」の時が約7万枚だったのと比べると一見大きな落ち込みのように見えるが、ファン以外への「公式」プロモが全くと言っていいほどなかったことを考えれば大したもの、と言ってもいいのではなかろうか。


しかし、なんだろう、この彼らを取り巻く独特な空気。ファンから一方的に彼らに何かを求めるのではなく、彼らと何かを共有したい、一緒に何かをつくり上げていきたい、と思う強い気持ちのようなもの。そう、まさに「捧げる」という感覚がそこに生まれたように思う。
最近あちこちで不協和音の起きているらしいKinKiファンが、少なくとも同じ方向を(完璧とは言わないまでも)向いたということも、特筆すべきことと思えた。
JEさんがそこまで考えてこの「ノープロモ作戦」を決行したと思うのは、ま、考えすぎでしょうけど。これに味をしめて、以後のプロモ予算を削減したりしないでね。


こうなると、是非ギネス記録も更新して欲しいもの。CDデビュー15周年、波乱含みの年明けながら、やはりここはパーッといきたいものです。