初Fashion & Music Book


今年最初のFashion & Music Bookでは、2012年SHAMANIPPONの所信表明が行われた。半眼でご説法姿の剛っさんが見えるような(笑)、柔らかさの中にも意志の強さの感じられる声。


そこで語られた中で印象的だった、「僕らは忘れていく生き物」という話。
< 僕らは忘れていく生き物だけど、忘れたくないこと、ほんとに僕、いっぱいある。過去の自分の過ちも、人にされた嫌なことも全部覚えたままで生きて行きたい。自分という人間をつくったプロセス、それがなくなったら自分でなくなりそうで怖い。>


「Walk on...」の、♪あの出会い この出会い 全てがこの僕を カタチづくったディテール♪というのは私も大好きなフレーズ。剛っさんは心配しているけど、生きてく中で経験した本当に痛かったことっていうのは皆忘れないものではないかな。時間が経てば傷口は塞がるけれど、痛みの記憶は残るから、同じ過ちを犯しそうな時や同じ問題に出くわした時にはその傷跡がうずくもの。問題はむしろその痛みを忘れようとする心かもしれない。


2011年3月11日、福島で、そして津波に襲われた地域で起きたことを、私たちは本当に正しく知っているんだろうか。国民が「パニックになるから」「トラウマになるから」と言ってその映像や資料を隠し続け、根拠も提示せず「大丈夫」と言い続ける政府。まるで戦時中のようで、真実を知ることができない恐怖を感じる。でも、真実を知ってしまうことで心に傷を残すのが怖いから、恐怖や痛みを感じるのを避けるために、あえて見ないよう、忘れようとする気持ちが私たちのどこかにあって、それを許しているとしたら、それが一番怖いことだと思う。


傷つかないで生きていくなんて無理だ。だから自分の犯した過ちも人から受けた嫌なことも、自分の中で傷が時々うずくのを感じながら生きていくしかない。
「自分探し」なんて言葉も流行ったけれど、自分はここにいる自分でしかない。どこかに行けば出会えるものではなく。剛っさんが言う「戻ることが未来」というのは、自分の痛みの根源をきちんと見つめ、痛みを感じている自分を認めることから始まるんだと思う。自分の痛みから目をそらしている人に他人の痛みはわからないし、傷つくのを怖がって現実を見ない人に未来なぞ見えるわけがない。


「大切なのはプロセス」。結果がどうなるかなんて誰にもわからないのだから、何でもない毎日の中でいつも何か夢中になれる何かに向かって、その結果に至るプロセスを楽しみながら生きていたい。そうすれば、たとえ結果が自分の望んだとおりのものでなくとも、そこに繋がった日々は宝ものになる。


2012年、剛っさんのSHAMANIPPONという「くに」づくりが本格的に始まる。