転がる石は苔むさない考


今日は街へクリスマスの買出しに行った。
毎年この時期になると後悔する。「あーもっと早目に買っとけばよかったぁぁぁ」。絶対そう思っている人は多いはず。でなきゃクリスマス前の最後の週末に、街がこれほどイモ洗いになることはあるまい。ううう。


円高のおかげで今年は特に旅行者が多いのか、日本人を沢山見た。近年、ヨーロッパのクリスマスマーケットに人気があるようで、この時期の旅行者が増えている気がする。最近は中国人、韓国人に押されて日本人は目立たない。団体旅行じゃなくてフリーで来る若い人が多くなったからかな。エッと驚くような田舎で彼らと遭遇することも増えてきた。ワーキングホリデーで来ている人が増えたからっていうのもあるのかもしれない。


日本の友人から相談をされたことがある。
彼女の娘が大学を休学して留学したいと言っている。どうやら人間関係がうまくいっていないらしい。どーしよーかしら?どう思う?・・って聞かれても困るんだけど、基本的には人間関係なんてどこに行ってもあまり変わらないと正直思う。
私がかつて30過ぎて留学した時の理由は、やはり会社の人間関係に煮詰まって疲れ果てての「一回休み」。直属の上司ととことん性格的に合わなくて、それまでの人生で経験したことのないストレスで気が滅入り、心身ともにしおしおになってしまった。それで少し元気を出そうと思って出かけた外国で私が得たのは、結局どんなところに放り込まれても、自分のことを好きになってくれる人と嫌う人の割合って同じなんだな、という発見だった。拙い外国語でのコミュニケーションは、自分の曖昧な部分を浮き彫りにする。いろんな社会的、文化的な価値観は違っても、人間的な好き嫌いというシンプルな感情は、そんなに違うものじゃない=ああ、逃げ場なんてないんだ。目からウロコが、ごっそり落ちた。どこかで「ここではないどこか」へ逃げ込みたいと思ってた自分がいたことにもそこで気づき、私の中で何かがしっくりと収まり心が軽くなった。自分らしくいくしかないんじゃん、と素直に思えた。


「変なかたちの石」に「ぼくらはそれでも流されずもっと自由に生きるんだ」という歌詞がある。”転がる石は苔むさない”というアレかな、と思ったのだけど、この言葉は文化によって解釈が違うらしい。
伝統を重んじるイギリスでは、どっしりとひとつところに落ち着くのはよいこと。苔は「成果」の意味になる。が、アメリカでは、常に動いているものは古びない、と苔むすことは「停滞」を意味する。そして日本では、基本的にはイギリス風解釈ながら、「石の上にも三年」的な、ざぶーんざぶーんと打ち寄せる波(=苦労苦難)をじっと耐えるガマンが美徳として語られているようだ。その上、米英では、最終的な”かたち”までは言及されないのに対して、カドが取れて丸くなること=個性を消すことが完成形とされるところが、日本で「自分らしく生きる」ことの難しさなのかも。でもこれは「外見は丸くなっとけ。人間肝心なのは質なのだ」という日本の「本音と建前」文化であって、それ自体は悪いことではないと思うのだけどね。


結局、その娘さんはワーキングホリデーに出かけてたくましくなって帰ってきたらしいので、彼女もそこで何か見つけたのかもしれない。でもこれは、単なる「気づき」の問題だと思うので、わざわざ外国に行く必要はない。きっかけはどこにでも転がっているものだと思う。それこそ人それぞれ、「自分らしさ」は違うから。


まっすぐさ、正直さは、不器用さ。そんな剛っさんが私は好きなのだけど、「自分らしく生きる」ことにこだわる彼には、KinKi Kids15周年、ソロ10周年を迎える今、この曲は格別に心に沁みたんだと思う。スルメ曲を噛み噛み、私もあんまり丸くなったとは思えない自分を、ふと振り返ってみる年の瀬。