アーティスト/アクティビスト


1日のFashion & Music Bookで、先日の「十人十色」東北ライブについての話などあったようで。
ファンの方からのメールによると、福島のタクシーの運転手さんが「堂本剛、すごいね。会場満員で街にも活気が出て、ずっとやって欲しいよ」と言っていたとか。


日本の報道で何が足りないかと言われれば、今の被災地の様子を具体的に伝えようとする態度じゃないだろうか。実際、どの程度被災者の方々の生活は「復興」しているのか、していないのか。何が足りないのか。政府にはどうして欲しいのか。私たちは具体的にその時々に、どんな支援をすればいいのか。きっと時が経ち、季節が変わることでも、必要な物資など変わってくるのだろうし。
今も、被災地のあちこちで復興作業が行われているが、それが具体的にどんなものでどの程度進んでいるのか、沢山のボランティアが入れ替わり立ち代り作業を手伝っている、その生の声なども、もっと日常的に報道するべきだと思う。
忘れっぽい私たちに、「まだ何も終わってはいないのだ」、ということをしつこく、しかしこちらが飽きないよう効果的にリポートし続けることが、今報道ジャーナリストの大切な仕事のように思える。


剛っさんは彼のできる範囲で一番復興に有効なことは何なのか考え、黙々と行動に移しているようだ。
今回のように東北でライブをすることで、被災地のファンを励まし、現地の経済を活性化の手助けをする。先日は台風12号で大被害を受けた天川村の洞川(どろがわ)温泉をDVD撮影地に選び、出向いたそうだ。彼がそうやって被災地を訪ねるのも(ほとんど「行脚」ですね、あれは)、MSで「ごろごろ水」の名前を出すのも、復興のための広告塔になることが彼にできる一番の支援だと考えたからだろう。


アーティストというのは、傷ついた心の復興だけでなく、こうして有名であることを利用して(レディー・ガガも言ってたけど)、現実的な復興に一番必要なお金を集めることもできる人たちだ。
3月11日以降だけでなく、私が面白いことやっているなあ、といつも思うのが坂本龍一。このブログでも、剛っさんと関係の深い「水」をめぐる環境問題のことなど書く時、よく思うのが彼の設立した「モア・トゥリーズ」という団体。http://www.more-trees.org/index.html
元々は、文字通り「木を増やし、健全な森を増やし、森が吸収するCo2を増やすことで地球環境を守る」ために作られた団体なのだが、3.11以降、「LIFE 311」というプロジェクトを立ち上げ、被災地周辺の木を使って仮設住宅を建てる活動を始めた。現在総額で4000万円ほどの寄付が集まり、既に被災者の方々の多くがその仮設住宅で快適に暮らしている。


本業の音楽でも、彼は「commons」というレーベルから、日本の唱歌や童謡を集めたアルバム「にほんのうた」(vol.1〜4)をリリース。美しい日本のうたを今の時代に伝えたいと始めたこの活動でも、震災後、東北をキャラバン形式で周り、うたを届ける「にほんのうた 東北プロジェクト ライブキャラバン」という支援ライブをしている。http://www.commmons.com/index.html
聴く者を癒しながら、また失われつつある唱歌や童謡のよさを見直し、美しい日本の言葉やメロディーを後世に伝えていく。
一度失われた文化はなかなか戻ってこない。だから守る。


アーティストは同時にアクティビストでもある。彼らの行動を見ていて思う。