警鐘は鳴り続ける


「原子力行政の信頼失墜」。
玄海原発の「やらせ」に続いて、また浜岡原発と伊方原発で過去に開かれたシンポジウムに於いて同じような「やらせ」があったことが発覚した。そこで、冒頭のような見出しが紙面に躍ったわけだが、この事件を鬼の首を獲ったように大騒ぎで報道するマスコミにも、やらせがあった事実と同じくらい、腹が立つ。
「そもそもあんたたちは本気で彼らを『信頼』なんてしてたわけ??」


やらせ事件にしても、少数ではあってもその都度「あれはおかしい」「調査してほしい」という声はあったに違いないのだ。そういう国民の声に聞こえないフリをし、少数の気骨あるジャーナリストや専門家による報告書を握りつぶし、果てには「トンデモ」「危険人物」扱いし叩き続けたのは一体誰だっただろう。
私は日本の報道に携わる人々が全員アホだとは思わない。だからこそ、日本政府が原子力発電を国策として「つつがなく」推進してこられたのは、政府の広報機関に成り下がったこの国のマスコミのおかげであり、その点に於いて彼らは同罪だと思うのだ。


今、政府+電力会社の情勢不利が見えて来たところで、彼らが一斉に過去のやらせを糾弾し、「信頼失墜」と叫ぶ、その日和見主義の見苦しさ、白々しさには心底やりきれなさを感じる。
事実、3.11以降国内あちこちで始まった反原発デモに対し、日本のマスコミはほとんど無視に近い態度を取ってきた。海外のメディアが大きく取り上げているにも関わらず、だ。そこには何者かに対しての報道の自粛、そして偏向があったとしか思えない。


「地球はひとつの自浄作用をもった生命体として機能している」という学説がある。
私たち人類を含め地球上に推定4百万種棲んでいるという生物、そして土、大気、海すべてが複雑な相互関係の中で絶妙な環境を作り出している。大気とて偶然の産物ではなく、地球上に棲む生物によって最も適切なものが作り出されているのだ。
となると当然そのバランスを環境破壊によって崩すことはほとんど自殺行為に等しい。その破壊が限界まで達した時、地球は自浄作用として急激な大変動を見せるかもしれない・・。


近年日本だけでなく世界各地で大規模な地震が起きている。最近イタリア周辺でもM3程度の地震が多く観測されているようだ。それをなんと見るか。自然がこれまでにも放ってきた様々なサイン、警鐘を私たちは見ない聞かないフリをして来なかったか。
「なにも聞こえませんでしたよ。今日もいい天気ですね」と言い続けた政府やマスコミがアテにならないとわかった今、私たちひとりひとりが自分の直感を信じ、想像力をフル稼働させ、何が真実か見極める力を持たなくてはならない。自然環境を守っていくには、自分の命を守っていくにはそれしかないのだ。


私の住む国では買う「電力」が選べる。
原子力発電によるものの他に、水力発電のみ、太陽光発電+水力発電の組み合わせ、太陽光発電のみ、とか好きな「電源」を選べる。原子力発電で作った電気を買わないことが、直接反原発へのアクションとなるのだ。
今は原子力発電より太陽光発電の電力は高いが、それも研究が進み、選択する人が増えれば自ずと低価格になっていくはずだ。


同じことが日本でできないわけがない。
彼らが責任のなすり合いをしている今この時も、警鐘は鳴り続けている。