KinKi Kids 「Time」@「考えるヒット」


週刊文春の近田春夫の「考えるヒット」、今週はKinKiの「Time」でした。
ほぼ1ページ丸ごと割いてのこのレビュー、「近未来っぽい音なのに抒情的な歌声キンキの新曲のミスマッチが残念!!」という見出しのとおり、彼にとっては「イマイチ」という評価。ちょっと彼の言い分をピックアップしてみましょー。


<イントロが流れてくるとハリウッド製SFのサウンドトラックかダークなヒップホップか?緊張感あふれる弦が重くリズムを刻みはじめると、CG合成の人工的な光景がまぶたに浮かんでくる>


<(PVを見て)おそらく着想をブレードランナーに得ているのはたしかで、それだけでもイージーな気がしないでもないところに持ってきて、画面にいわゆる”近未来感”があんまりないから困った。こちらの想像力をあまり喚起してくれないのである。KinKi Kidsのふたりが”壊れたロボット役の人”と普通に公園にいったり、お散歩してるだけにしか見えぬ、なんともありがたみのないビジュアルなのだ>


<音楽自体は普通にかっこいいと思う。(略)そのゴージャスな音と、結局ふたりの声質なのか歌い方なのか、相性が良くないということになるのかもしれない。このトラックとメロディーなら、それこそ最近の東方神起よろしく、アンドロイドのような無機的な歌唱がきっとしっくりくると思うのに、そういったサウンドの事情を全く歌に反映させていないというか。普通に抒情的なのだ。ゆえに歌声と楽曲がなんだか「水と油」にも思えてしまう>


<あえてそうしたのか、出来なかったのか。ともかく結果としてそのぶつかり合い−ミスマッチ−が化学反応を起こしきれず中途半端に終わってしまったというのが、今回の偽らざるところではないかと思うのである>


さすが、春夫ちゃん。掘り下げるべきところを掘り下げてくる。
郷ひろみつながりで彼とは長い付き合いになりますが(もちろん面識はないけど(笑))、彼は筋金入りのミーハーとしての歌謡曲への愛情、そしてクリエーターとしての厳しい目線の両方を併せ持った稀有な人だと思う。
そんな彼の今回KinKiの「Time」に抱いた感想は、これからの日本の歌謡界のあり方を問うテーマを含んでいるように思えた。


現在の韓流ブームのことを前回ちょこっと書いたけど、この韓国歌謡界と日本歌謡界の一番の違いは結局「どこまで上を狙うか」というところなんだと思う。現在の韓流は明らかに日本より上に行くこと、ひいては世界に打って出ることをきちんと照準に入れて人選をし、楽曲もイメージ戦略も本格志向だ。
今世界を狙う=テクニック重視のアメリカ進出となった時、歌もダンスもうまくてルックスもいいというのは最低ライン。そして、曲も東方神起なんかは世界のトレンドを意識した音づくりをしているのに、なんでKinKiは中途半端なんだ、というのが彼の感じたところなんだと思う。


そこなんだ、そこそこ。そのはがゆさはPVにも現れる。彼の持った感想はクリエーターが客観的に見て持って当たり前のことだろう。
私も正直物足りないものを感じていたものの、彼らのCD売り上げ枚数を知っているし、だからPVにかけられる金額はこのくらいだろうとか、2泊4日で撮れる限界はこのくらいだろう、という目で見ていたことは否めない。
そう、「もっと上」は最初から想定外だったのである。
だから、本来のKinKiの持ち味である「抒情性」を捨ててまで完全に音的なトレンドに乗る、ということを国内的なアピールに的をしぼるジャニーズ事務所はあえてしなかったのだ。
それはKinKiにとっての失敗ではない。そこが今の日本歌謡界の限界なのだ。