硝子の少年リターンズ


J-album を聴く。遅っ。

剛、剛と大騒ぎしてますが、なんせファン歴半年ですからね。ソロはE☆E含めて全部聴いたけど、KinKiのアルバム、ちゃんと通して聴くのはこの「J」が初めて。正月に買って書籍やらなんやらと一緒に船便で送ったのが届いたんで、早速拝聴させていただきます。よっこらしょっと。


なるほど。これがほぼ現在のKinKi Kidsであり、剛を悩ませる「パブリックイメージ」というものなんだ。シングルだけ聴いてた時はわかんなかったけど今はなんだかわかる、彼の心に茫漠とした荒野が広がってしまうのが。


アルバムとしては、「Secret code」と「宝石をちりばめて」がアレンジ的に浮いてる感があるも、どの曲も上質なポップスでクオリティ的には文句のつけようがない。完成度高し。が、なんだこの説得力のなさは。剛の透明な歌声にも全くリアリティが感じられない。


果てなき空、希望の架け橋、空に描く未来図、そんな数十年ぶりに聞いた気がするベタな言葉がちりばめられた、やけに空虚で箱庭チックな「青春像」。アレンジに助けられてるけど、歌詞だけ読むと異常にメランコリーで、限りなく遺言に近いラヴソングがあったり、心が折れまくり。未来はあまりに茫洋としすぎていて、前に進もうにも足がすくむ。・・・これって、ほんとリアルにKinKiに求められているものなの?


一応KinKiのセルフプロデュースってことになってるけど、彼らには一体どれだけの自由があるんだろう。って、多分ないに等しいんでしょうね。方向性にしても曲選びにしてもあらかじめジャニーズ印の「枠」がガッシリ決まっていそう。だから剛がやさぐれちゃうわけで。


A-albumから順を追って聴いていないワタシには、ここに至るまでKinKiの世界がどんな風に成長して(もしくは煮詰まって)きたかよくわからないけど、これが「To Heart」や「ボクの背中には羽がある」の少年の「その後」なのだとしたら、それはあまりに孤独すぎないか?
それとも、もしかしてKinKiの世界はひとめぐりして「硝子の少年」に戻ったのかな。J-albumの中の元・少年はひょっとしたらあの時「硝子の少年時代の思い出」を懐かしんでいた彼その人なのかもしれない。(ならこれでいい、ってわけじゃないんだけどさ)


ま、でも多分ターゲットは10代後半〜20代の草食系の女子たちなんだろうし、30男の「リアル」なんて、彼女たちには関係ないのかもね。KinKiしか聴かない、なんて子もいないだろうし。だからこそ、中途半端なことをするよりもブレないKinKiワールドを創りあげることがセールス的には一番大切なことはわかっちゃいる。が、なんかこうもうちょっと熱くPOPなアプローチをさせてあげられないものか?こんな地味で辛気くさいアラサー人生歌い上げてるばかりじゃカッコいいオトナになれやしない。「Secret Code」みたいな珠玉のナンバーがアルバムの中で迷子になるなんてのももったいないよ。ねえ、ジャニーさん。


ところで、ワタシはこの中では「約束」が一番好き。最高に辛気くさくて(笑)。剛の声ってこういうドMな男の心情を歌わせたら日本一だと思う。凄味すら感じられる。いいわー、この閉塞感。ゾクゾクする。「これがKinKiワールドの醍醐味だっ」と言われたら「そうですね!」とつい答えてしまいそうな、湿度マックスな名曲。