「天魔さんがゆく」第一話


今夜は「天魔さんがゆく」の第一回。
「有限会社おばけ警備保障」(通称オバケー)を経営する天魔と、ゲーム会社と間違えて入社してきた新人あさひ(川口春奈)と、番頭の大覚(皆川猿時)が、中学校に落武者の幽霊が出ると聞いて駆けつけると・・・。


ん?思ったよりフツーのドラマじゃん。剛さんフツーにかっこいいじゃん。やけにマジメなセリフ吐いてるじゃん・・・なオープニングをいぶかしんでいると・・・要は、じわじわ来るやつなんですね、これ。話が進むにつれ、最初のオトコマエ社長の化けの皮がほろほろと崩れていって、「きゅーっ」と白目むいて気絶したあたりから、本来の怖がりビビりたおしの天魔さんが見えてくる。
夜の校内を皆で手分けして落武者探しに出かける時、宿直の先生に「一緒に行きましょう。ぼくが守りますから(キリッ)」とか言ってるのも、実は1人で行くのが怖いから。女子トイレに入ったら怪しい人影が隣の個室に入ってきて絶叫するあさひの元に駆けつけても、「女子トイレに入るなんていうモラルに反することはできない」とか言って、頑なに救助に入るのを拒む、とか。
 

大覚さんがちょいちょいアドリブ入れて天魔さんをイジる(天魔さん気絶してるはずなのに笑ろてる)ところとか、多分ほぼアドリブなんだろうなと思わせる死んだオトン(佐藤二朗)との会話とか、女優がここまでやるかと異常な大物感を漂わせるあさひ役の春奈ちゃんとか、まだ今回は出番のなかった警視庁の 足利警部 (森崎博之) と 大平巡査 (鎌倉太郎)とか、なんだか今回は本編に入ってゆくためのほんの助走というかんじ。
1話完結ではないので、落武者をどう説得するかは次週へ持ち越し。番組の一番最後に佐藤二朗さんと剛さんの、役どころを離れたガチのフリートークがあるのだけど(今回は剛さんがジャニーさんのマネしてた)、正直かなりカラミにくそうなキャラの二朗さんと、それにまだ戸惑っている風な剛さんとのビミョーに噛み合わない会話も、回を重ねるごとに面白くなっていきそう。


しかし昨今、ドラマにも小説にもやけに「幽霊」「妖怪」「宇宙人」「超能力」なんていうワードを見つけることが多い気がする。何にでも既に答えが用意されている現代に於いてもなお「ミステリー」で、自由に想像力を遊ばせることのできる領域。
スマホさえあれば、LINEだのe-mailだのSKYPEだのですぐに人と「繋がる」ことができてスレ違うことがなくなった(できなくなった)し、欲しい情報は何でも手に入る。年の差、人種の違い、不倫、二股、性別を超えた恋愛、どれも最早大きな障害にはならない。そんな「なんでもあり」な世の中には、不条理な我慢も諦めもないから「切ない」や「ドキドキ」が育たない。そんな現代にファンタジーの潜む可能性のあるところを探した結果、「幽霊」や「超能力」ドラマに着地するのかな。


この天魔さんの持つような、「死者とコミュニケートする能力」は、なんじゃかんじゃバッシングなどありつつも、いつの世も人の興味を引く。フツーの人間には見えないものが見える、聴こえないものが聴こえる、感じる。
年を重ねれば重ねるほど、「会いたいけどもう会えない」存在が増えてくる。天魔さんのように「きゅーっ」と気絶する度に、亡くした大切な存在に会えたらどんなにか嬉しいだろう。生前どうしても訊けなかったことを訊いてみたい。もう一度、触れたい。「幽霊でもいいから会いたい」と思う切なさ。どんなコメディーであっても、そう思ったところには「命」を考えるきっかけが潜んでいる。


剛さんがラジオで話していた「瞬き」という曲はエンディングテーマとして流れた。優しく切ない「命」のうたは、SWING-Oさんのアレンジ。
   ♪ 瞬きをするたび 大切なものが消えていく 
     こぼれても走る 眼差しの色が 叶わない恋みたい ♪
叶わない想いは募るだけだ。人はその切なさから逃れようとして、時にひとときのファンタジーに身を浸す。そんな歌に聴こえた。


オープニングテーマは、天魔さんの予告編で流れた「shamanippon」というフレーズの入ったあの曲、タイトルは「Welcome to Shamanippon」。「ラカチノトヒ」のインスト曲を手掛けた牛尾憲輔さんのアレンジしたその曲は、「ゴーストバスターズ」のテーマ(「あまちゃん」で駅長がいつもカラオケで歌うアレです)のかほりのする、少しザラザラとしたノイズっぽい打ち込み系。「でらかっこいい!」と意味なく名古屋弁が出るほどかっこいい曲!


ややネタバレした気もするけど、読んでから見ても全然大丈夫。観た後にじわじわまた観たくなる仕掛けと剛さんの魅力がぎゅうっと詰まった「天魔さんがゆく」。先にゆくほど、チームの結束が固くなるほどに面白くなっていきそうなドラマなのだ。