水声


なら100年会館での「十人十色 水声〜suisei」の詳細が発表になった。
10月22日(土)19:00〜/10月23日(日)16:00〜/10月24日(月)19:00〜


10月21日の「NIPPON」発売の翌日からの公演ということで、これが日本に於けるプロモーションでもあると言うことかな。Amazon JapanやTower Records、新星堂さんなんかでも現在予約受付中とのこと。やっぱし剛っさんのアルバムとなれば、怪しい輸入盤専門店で細々と販売というわけにもいかないか♪
だったらいっそ会場で売ればいいのに。と思うのは私だけではあるまい。「オトナの事情」はようわかりませんな。


「水声~suisei」というのが、今回のライブのサブタイトル。
水の声。深い原生林にかすかに響く澄んだせせらぎの音。静かな水底で小さな泡沫が生まれる音。はねた魚の尾が水面を叩く音。水辺は小さなささやき声に満ちている。
フランスだけでなく、ヨーロッパの田舎はどこもきれいだ。ボキャブラリーが貧困で申し訳ないが、本当にきれいとしか言いようがないのだ。言い換えるなら「豊か」か。
今回フランスの田舎ばかり、パリを中心に50〜100kmくらいの郊外をぐるり一周旅行して、農家やリタイヤした元パリ住人などがやっているB&B(フランスではシャンブルドットと呼ばれる)を泊まり歩いた。
パリからほんの一時間も車を走らせただけで、そこはもう別世界。360度地平線、畑畑牛畑牛牛畑、みたいな。「人の手が入る」と言うと、日本だとネガティヴな意味にとられやすいが、逆にヨーロッパは農業国が多いから、畑や牧場は常に人の手が入っていて見た目にも美しい。
ハイジのイメージのスイスなんかは、政府が農家を援助してまでスイス産の市場を守っている。当然、肉や野菜は異常に高いが、それをしないとEC圏からの安い肉や野菜にスイス産が駆逐されてしまう→野菜農家も畜産農家もやっていけない→田畑も牧草地も荒れる→あの美しい景観がなくなり観光地としての価値も失ってしまう。ということになるからだ。
日本の田舎が目に美しい景観を失ってしまいつつあるのは、まさにそこに原因があることがよくわかる。


ヨーロッパの田舎に行くと不思議に思うほど、川がそのまんまの形で流れている。コンクリートの堤防とか川底の補強とか何もしていないのだ。鮮やかな緑の藻をゆらす澄んだ水のほとりに白い花が咲き乱れる。ミレイの「オフィーリア」がどんぶらこと流れて来そうな”スッピン”の小川。
しかし、温暖化が進んで昨今はヨーロッパでも雨量が増えて洪水がよく起きるから、これから田舎も必要なところには「補強」が施されるのだろう。が、そこはあくまでも「自然がそこにあるのを守るため」であって、景観はしっかりと守られることだろう。ちなみに「どうやって隠してるんだろー」と思うほど、あんなに原発のあるフランスで一度もその施設らしいものを目にしなかったのには驚いた。そういうのも「込み」の景観保護政策ってやっぱすごい。
(が、先日のフランス南部の核廃棄物処理施設の事故。政府はなんでもないと言い張っているが、やはり近隣の町で放射能濃度が8〜10倍になっているという報道もある。光が強ければまた影も濃い、ということなのか)


日本がまた「うまし国」へ戻るテコ入れには、まず海外からの観光客の目を意識した「観光国・日本」としての、いわば「ハイジへの逆行」的政策も望まれるのではなかろうか。野山に「手を入れ」る農業、林業の復活で自給率を上げることが、観光国としての力にもなる。
美しい自然に暮らすということが人間の「基本」。機能的で安いけど無機的で醜いものから、手がかかって割高だけど温もりのある美しいもの、への価値観の転換。


そこには今回の放射能問題を考えると同時に改めなくてはならない環境問題が山積している。
もちろん景観だけでなく、例えば水ひとつをとっても、日本の飲料水の塩素処理問題など読むとそら恐ろしい。どんなにおいしい湧き水もペットボトルに入れて売られるために塩素殺菌が施される。この塩素が発ガン性物質トリハロメタンなどを含んでいるのだ。川や湖を水源とする水道水も、汚染された水が濾過、塩素殺菌され蛇口から出される。汚染が進めば投入される塩素量も必然的に増える。
「じゃあ、きれいな湧き水のある田舎に住もう」と思っても、その湧き水を生み出す山林が今中国などの外資にどんどん買われていっている。そして、そこを規制する法律が日本にはない・・・。


水は澄んだ声で歌っているか。空を映して青く豊かにたゆたっているか。
今、この日本で。