メルトダウンする心


数日前から福島原発のいくつかの原子炉でメルトダウンが起きている(いた)とのニュースがあったものの、その追跡記事があまり出ない。震災直後はあれだけ騒いだメディアも、「もうメルトダウンくらいじゃ視聴率取れないしなー」くらいなこと言ってそうな気配すらある。で、結局提示されるのは相変わらず学者のセンセイたちの「自分なりのメルトダウンの定義」だったりする。アホか。


ここまで来たらいくらなんでも隠し事はできないだろうと思ったけど、どうも東電は政府にもまだ何か隠してそうだし、その政府も「国民をパニックに陥れてはいけない」とか寝言言いながら何か隠してるし、かと思えば内閣官房参与の平田オリザが韓国で、「東京電力が4月に福島第一原発から『米政府からの強い要請』により低濃度の放射性物質を含む汚染水を放出した」とか、(ウソかホントか知らないけど)国策をペラペラしゃべっちゃうし。あんたら皆アホか。


私は人間てのはどんなにアホだろうが欲の皮が突っ張ってようが、さすがに自分の命は惜しいだろう、という見地から「なんだかんだ言っても政治家も東電も御用学者も東京にいるということは”大丈夫”ということなんだろう」と思っていたけど、私は忘れていた。あの人たちって自分の保身だけでなく、上司や会社のくだらないプライドのためならオノレの死を以ってでもその秘密を守りぬく人たちだってこと。私たちはこれまでも政治家の秘書や企業のトップの「オノレの口封じ」のため、「真実を永遠に闇に葬る」ための自殺を数多く見てきたってこと。
あの菅さんの憔悴した姿や、東電社員の明らかに思考停止した顔を見てると、彼らはもう日本国民を巻き込んだ集団自決を勝手に決めてしまったようにも見えてヒジョーに嫌な気分になる。


どんな発電法にもリスクはある。とは言え、原発の抱えるリスクを超えるものはない、っつーのが今回私たちが学んだことなはず。当然代替の技術開発が今話題の中心にならなきゃおかしいはずなのに、政府は東電を、原発をどう守るかしか考えていないように見える。
調べてみると、やはり電力会社や政府(根っこは同じ)からの圧力で進んでいない新しいクリーンエネルギーの研究は沢山あるようだし、個人が自分の畑や山林で使うために開発した自家発電機器の使用にも様々な省庁から妨害が入るそうな。世界に誇る日本の技術力はそこにあるのだ。だが、使わせない。


別に明日からすぐ原発全部停めろ、と言っているのではない。
新技術を開発しそれを使った発電が1%増えるごとに原子力発電を1%減らしてゆけばいいのだ。例えば1つの技術で30%まかなう必要もなく、30種類で1%ずつだっていいわけで。ソーラーでも水力でも風力でもその土地土地に合ったやり方で地方自治体が管理してゆけばいい。
とにかく電力会社を今のような独占企業のまま放っておかないで欧米のように自由市場にすれば競争が生まれ、新しい技術開発だって進んでゆくはずなのだ。


そんなのフツーの主婦だってわかるんだから、政治家にわかってないわけはない。それをこの非常時を以ってしても思考回路が何かにブロックされてすぐに方向を切り替えられない、その理由がカネよりもむしろ、完全に腐敗した政治家や企業の「プライド」だったりしたら、実はそれが一番怖いことだと思う。


ホラー作家のスティーブン・キングはかつてインタビューで「あなたの一番怖いものは?」と訊かれて、「これまでいろんな恐怖を描いてきたけど、最終的に一番怖いのは”人間”だと思う」と答えた。
ゾンビよりヴァンパイアより正体不明の怪物より、そして放射能より怖いのは、様々な「欲」によってメルトダウンした人間の心なのだ。