「危険な関係」


「危険な関係」、拓郎さんがKinKiに贈った「男と男の物語」だ。ふたりの男の間に横たわる微妙な距離感。拓郎さんが感じたという「危ない空気」。もしかしたら「K album」の中で一番話題を集めた曲かもしれない。


拓郎さんの曲には男同士の友情の歌が多い、という印象がある。というか、彼の手にかかるとなんでもない男女の恋愛の歌も、どこか男の友情っぽく聞こえてしまうことがある。そしてその反対に、過ぎた青春の日々をともに過ごした友への想いや、旅立つ友に向ける言葉、そこにはいつも何か微妙な距離があるにもかかわらず、特有の濃密な空気=擬似恋愛に近いものが漂う。彼にとっては、男女であれ男同士であれ、その関係のあり方にあまり大きな違いはないのかもしれない。


「そんなによどみなく何でもかんでも一緒にしてるわけじゃなくて、かなり自由にひとりひとりが違う方向を向いていることが多いわけよ。そういうのって見てて非常に危険な関係なんだなって」。拓郎さんは、こんな風にふたりを語った。
時々思うことがある。表面的にはまったく正反対の性格のふたりだけれど、それは同じDNAを持つ一卵性双生児が、お互いにライバル心を持つところから全く違う自己を作り上げようとするのに似てはいないか。お互いに自分の魂の片割れを想いながらもその想いを語り合うことはしないが、求めるものは違っても、相手の考えていることは手に取るようにわかる。
拓郎さんの「7月26日未明」という曲にこんなフレーズがある。「人は生まれた時すでに旅をしている 頭の中にそれぞれの地図を広げ 誰かとの出会いで立ち止まっても 旅人を繋ぎ止める鎖は無い」。多分、ふたりは心のどこかで、もしそんな日が来てもかまわない、と思っている、そんな空気を拓郎さんは感じたんじゃないだろうか。


そんな拓郎さんの不安をぬぐうべく(?)放たれた剛っさんの言の葉。
「光一へもありがとう」
「KinKi Kidsにもありがとう 僕は幸せです」


私にも拓郎さんのいう「危うさ」はわかる気がする。でも、剛っさんが言ったように、それがKinKi Kidsの楽しみ方=魅力のひとつだと思う。彼らの物語は面白すぎて、読み終えるのがもったいない。チビチビ読みたいんだけど、ああ、きっと今夜も眠れない。そんな奇跡の物語だ。


この「危険な関係」という曲へのアンサーソングを勝手に選ばせていただくとしたら、私は拓郎さんの「君のスピードで」を選びたい。
歌詞はこちら・・・http://www.kasi-time.com/item-5957.html